デビューアルバムと光るスパッツ
11月25日が来た。
LOUDNESSのデビューアルバムがいよいよ発売となった。
(自分の歌うレコードがレコード屋さんに置かれるんやぁ!!)
まだ実感が沸かないでいた。
個人的には、素晴らしいバンドに巡り合えたこと、レコーディングが出来たこと、日本には今までに無かったタイプのハードロックアルバムを作れたことで大満足だった。
売れる売れないは最早自分がどうこう出来うる次元の話では無い。
まさに、まな板の鯉だった。
事務所の人からは業界内での評判が高いということは聞いていた。
レコードレビューも好意的な内容だった。
ただ、レコード会社にはLOUDNESSが売れるという期待感はあまり無かったようだ。
レコード屋さんへ行くのも怖くて行けなかった。
僕の知らない人が僕の歌ったレコードにお金を払ってくれる・・・。
それを考えただけで感無量だった。
(みんなレコードが気に入ってくれると嬉しいな)
考えることはそればかりだった。
レコードが出て翌々日、大阪の友人から電話があった。
その友人は大阪のレコード屋で働いていた。
「おい!!二井原!!お前のレコード物凄いことになってんぞ!!!飛ぶように売れてんぞ~~~!!ほんま良かったなぁ~~~!!!俺も無茶興奮してんねん!注文の時なお前が歌ってると知ってたから、ちょっと多い目に注文してんけど、アカン全然足らんわぁ!!レコード会社も製造追いつかん言うてたぞ!!お前は俺の自慢の連れや!!ほんま、おめでとう!!」
この友人の電話で少なくとも大阪の状況が把握できた。
本当に嬉しかった。
怖くてレコード屋へ様子を見に行けなかったけれど、安堵した。
次の日、母親から電話があった。
「あんた!今日な、おかあちゃんな、天王寺の百貨店のレコード売り場の前通ったらな、あんたの声が店中に響いててなびっくりしたわ!!どう聞いてもあんたの声やから店の中に入って店員さんにな『今流れてる曲は誰ですか?』言うて聞いたら、ラウドネスやって言うてなぁ!!おかぁちゃんびっくりしてなぁ!ほんま嬉しいてな、店でしばらく聞いててん。あんたの高い声が店中に響き渡っててほんま気持ち良かったわ!!ほんでな店のおねーさんにな『これうちの息子やねん!』言うてな自慢したってん!1枚買うといたで。お父ちゃんも喜んでるわ。昨日もな、お父ちゃんずっとレコード見ながらお酒呑んでな、寝る時も枕元にLP置いてな・・・・」
「まぁーなんでもエエわ、あんた、からだ気をつけて頑張りや!ほんで、いつ大阪帰ってくんの?」
母親はよっぽど嬉しかったのか電話の話が終わらなかった・・・。
数日後、レコード会社にメンバーが呼ばれた。
「デビューアルバムがこれほどの大反響になるとは思っていませんでした!!本当に、傾きかけていた第3製作部が持ち直しました!LOUDNESSさんありがとう!」
日本コロムビアの第3製作部(だったと思う)の製作部長から直々にレコードヒットの報告を受けた。
「へぇ~凄いやん!!」
リリースされたばかりのLPをヘッドーホーンで聴きながら京都から来た彼女が少し驚いた。
彼女はLOUDNESSデビューライブを観に東京へ来たのだ。
僕が東京に来てもう半年以上も時間が経った。
東京へ出てきてからと言うもの、目が廻るような環境の変化とバンドのレコーディングなどの忙しさが重なり、彼女になかなか連絡が出来ないでいた。
彼女はまじまじとLPを見ながら真剣な表情でLPに聴き入った。
「レコードで聞くと、なんかあんたの声やないみたいね・・」
少し意地悪い感じで言った。
「マジで目茶格好エエわ!ほんまプロってみんな演奏上手いなぁ」
「あたりまえやん!まぁープロ言うても俺はまだデビューもしたてやし・・・まだまだ歌も下手糞やし。」
僕は東京に出てきてからレコーディングに至るまでの話や、レコーディングの話など子供のように喋った。
「忙しくしてたんやね・・・元気そうで良かったわ・・・。私も無事卒業できそうやし。茶々丸も卒業できるみたいやで。茶々丸パン屋さんへ就職するみたいやわ・・・」
大学時代の友人の近況を教えてくれた。
「へ~茶々丸パン屋に就職すんのか・・・・」
久しぶりと言うこともあったのか、少し気恥ずかしい気持ちがした。
しばらく見ない間に彼女は少し大人になったような印象だ。
まだ携帯もメールも無かった時代だ。
遠距離で連絡できるのは唯一電話しか無かった。
留守電がようやく少し普及してきたという按配。
手紙やはがきと言う手段もあったけれど、筆不精の僕には億劫だった。
とは言うものの、もっと密に連絡を取ってあげるべきだったと反省した。
いよいよライブ前日になった。
「あんたいよいよ明日デビューコンサートやね、ステージで何着るの?」
僕は撮影で使った衣装を見せた。
黒のスパッツに豹柄のTシャツと革ジャン、白のブーツを見せた。
革ジャンはマー君と一緒に上野のアメ横で買ったジャケットだった。
「下のスパッツがなんか地味なこと無い?」
たしかに言われて見ればそうかも知れないと思った。
とは言ってももう明日ライブだしこれで行くしかなかった。
「明日ライブやし、もう寝るわ」
僕は先に寝た。
「そうやね、おやすみ!」
彼女はまだレコードを聴いてニコニコしていた。
僕はライブの興奮でなかなか寝付けなかった。
頭の中はまだ見たことの無い多くのお客さんでいっぱいだった。
嵐の前の静けさどころか、頭の中は大嵐だった。
(MCどうしたらええんかなぁ・・・・大阪弁絶対に出るやろな・・)
いつの間にか僕は寝てしまっていた。
朝6時ごろに目が覚めた。
ベランダから綺麗な朝の光が差し込んだ。
すずめが鳴いていた。
彼女はこたつで寝てしまったようだった。
コタツの上を見ると黒のスパッツが置いてあった。
スパッツの横には裁縫道具があった。
彼女は決して裁縫は得意でなかったけれど、夜通し寝ないでスパッツの横の部分に光るビーズ玉のようなものをくっつけてくれたのだ。
キラキラと光るスパッツが嬉しかった。
(ありがとう・・・・)
ヘッドホーンをしたまま寝た彼女の寝顔が綺麗だった。
LOUDNESSのデビューアルバムがいよいよ発売となった。
(自分の歌うレコードがレコード屋さんに置かれるんやぁ!!)
まだ実感が沸かないでいた。
個人的には、素晴らしいバンドに巡り合えたこと、レコーディングが出来たこと、日本には今までに無かったタイプのハードロックアルバムを作れたことで大満足だった。
売れる売れないは最早自分がどうこう出来うる次元の話では無い。
まさに、まな板の鯉だった。
事務所の人からは業界内での評判が高いということは聞いていた。
レコードレビューも好意的な内容だった。
ただ、レコード会社にはLOUDNESSが売れるという期待感はあまり無かったようだ。
レコード屋さんへ行くのも怖くて行けなかった。
僕の知らない人が僕の歌ったレコードにお金を払ってくれる・・・。
それを考えただけで感無量だった。
(みんなレコードが気に入ってくれると嬉しいな)
考えることはそればかりだった。
レコードが出て翌々日、大阪の友人から電話があった。
その友人は大阪のレコード屋で働いていた。
「おい!!二井原!!お前のレコード物凄いことになってんぞ!!!飛ぶように売れてんぞ~~~!!ほんま良かったなぁ~~~!!!俺も無茶興奮してんねん!注文の時なお前が歌ってると知ってたから、ちょっと多い目に注文してんけど、アカン全然足らんわぁ!!レコード会社も製造追いつかん言うてたぞ!!お前は俺の自慢の連れや!!ほんま、おめでとう!!」
この友人の電話で少なくとも大阪の状況が把握できた。
本当に嬉しかった。
怖くてレコード屋へ様子を見に行けなかったけれど、安堵した。
次の日、母親から電話があった。
「あんた!今日な、おかあちゃんな、天王寺の百貨店のレコード売り場の前通ったらな、あんたの声が店中に響いててなびっくりしたわ!!どう聞いてもあんたの声やから店の中に入って店員さんにな『今流れてる曲は誰ですか?』言うて聞いたら、ラウドネスやって言うてなぁ!!おかぁちゃんびっくりしてなぁ!ほんま嬉しいてな、店でしばらく聞いててん。あんたの高い声が店中に響き渡っててほんま気持ち良かったわ!!ほんでな店のおねーさんにな『これうちの息子やねん!』言うてな自慢したってん!1枚買うといたで。お父ちゃんも喜んでるわ。昨日もな、お父ちゃんずっとレコード見ながらお酒呑んでな、寝る時も枕元にLP置いてな・・・・」
「まぁーなんでもエエわ、あんた、からだ気をつけて頑張りや!ほんで、いつ大阪帰ってくんの?」
母親はよっぽど嬉しかったのか電話の話が終わらなかった・・・。
数日後、レコード会社にメンバーが呼ばれた。
「デビューアルバムがこれほどの大反響になるとは思っていませんでした!!本当に、傾きかけていた第3製作部が持ち直しました!LOUDNESSさんありがとう!」
日本コロムビアの第3製作部(だったと思う)の製作部長から直々にレコードヒットの報告を受けた。
「へぇ~凄いやん!!」
リリースされたばかりのLPをヘッドーホーンで聴きながら京都から来た彼女が少し驚いた。
彼女はLOUDNESSデビューライブを観に東京へ来たのだ。
僕が東京に来てもう半年以上も時間が経った。
東京へ出てきてからと言うもの、目が廻るような環境の変化とバンドのレコーディングなどの忙しさが重なり、彼女になかなか連絡が出来ないでいた。
彼女はまじまじとLPを見ながら真剣な表情でLPに聴き入った。
「レコードで聞くと、なんかあんたの声やないみたいね・・」
少し意地悪い感じで言った。
「マジで目茶格好エエわ!ほんまプロってみんな演奏上手いなぁ」
「あたりまえやん!まぁープロ言うても俺はまだデビューもしたてやし・・・まだまだ歌も下手糞やし。」
僕は東京に出てきてからレコーディングに至るまでの話や、レコーディングの話など子供のように喋った。
「忙しくしてたんやね・・・元気そうで良かったわ・・・。私も無事卒業できそうやし。茶々丸も卒業できるみたいやで。茶々丸パン屋さんへ就職するみたいやわ・・・」
大学時代の友人の近況を教えてくれた。
「へ~茶々丸パン屋に就職すんのか・・・・」
久しぶりと言うこともあったのか、少し気恥ずかしい気持ちがした。
しばらく見ない間に彼女は少し大人になったような印象だ。
まだ携帯もメールも無かった時代だ。
遠距離で連絡できるのは唯一電話しか無かった。
留守電がようやく少し普及してきたという按配。
手紙やはがきと言う手段もあったけれど、筆不精の僕には億劫だった。
とは言うものの、もっと密に連絡を取ってあげるべきだったと反省した。
いよいよライブ前日になった。
「あんたいよいよ明日デビューコンサートやね、ステージで何着るの?」
僕は撮影で使った衣装を見せた。
黒のスパッツに豹柄のTシャツと革ジャン、白のブーツを見せた。
革ジャンはマー君と一緒に上野のアメ横で買ったジャケットだった。
「下のスパッツがなんか地味なこと無い?」
たしかに言われて見ればそうかも知れないと思った。
とは言ってももう明日ライブだしこれで行くしかなかった。
「明日ライブやし、もう寝るわ」
僕は先に寝た。
「そうやね、おやすみ!」
彼女はまだレコードを聴いてニコニコしていた。
僕はライブの興奮でなかなか寝付けなかった。
頭の中はまだ見たことの無い多くのお客さんでいっぱいだった。
嵐の前の静けさどころか、頭の中は大嵐だった。
(MCどうしたらええんかなぁ・・・・大阪弁絶対に出るやろな・・)
いつの間にか僕は寝てしまっていた。
朝6時ごろに目が覚めた。
ベランダから綺麗な朝の光が差し込んだ。
すずめが鳴いていた。
彼女はこたつで寝てしまったようだった。
コタツの上を見ると黒のスパッツが置いてあった。
スパッツの横には裁縫道具があった。
彼女は決して裁縫は得意でなかったけれど、夜通し寝ないでスパッツの横の部分に光るビーズ玉のようなものをくっつけてくれたのだ。
キラキラと光るスパッツが嬉しかった。
(ありがとう・・・・)
ヘッドホーンをしたまま寝た彼女の寝顔が綺麗だった。
by loudness_ex
| 2008-07-16 09:52
