のどが焼ける
ご意見、ご感想、いつでも気軽にメール下さい。
vocalism.niihara@gmail.com
基本的に僕の方から個人への返事は期待しないで下さい。
よっぽど必要と思われる方へは当然しますけれど・・・。
これはと思うご意見、ご質問は、質問者は匿名の上、このブログ上でお答えさせてもらいます。
::::::::::::::::::::::::::
LOUDNESSデビューアルバムのリズムトラックのレコーディングは数日で終了した。
プロのドラマー、いや樋口宗孝と言うドラマーの凄まじさを封じ込めた、入魂のレコーディングであった。
今まで、リハーサルスタジオやライブハウス、コンサートホールと言う環境での演奏しか経験の無かった者にとって、このレコーディングスタジオは自分の姿を丸裸にされるような厳しい環境であると思った。
全ての音がクリアーにはっきりと聞くことが出来る、即ち、誤魔化しが効かないシビアな環境なのである。
レコーディングスタジオで、人の演奏を聴いている分にはむしろ楽しんで「おぉこんな凄い演奏が!!」と思いながら聴くことができるのだけれど、自分のパフォーマンスには穴があったら入りたいような心境に至った。
レコーディングスタジオ、例えば、手鏡に自分の顔を映しながら他人に「数本鼻毛が出ていて、目やにが付いていて、吹き出物が数個ここにあって・・・」とこと細かく知りたくない情報を指摘されるような、そんな仕事をする場であると同時に、「こんなに目が輝いていて、素敵な笑窪があって、笑うと口元が素敵だよ」と教えてくれるところでもあった。
レコーディングは急き立てられるような感じで進んだ。
実際、与えられた時間は少なかった。
それは、後で分かったことなのだけど、レコーディングが初めての自分にとっては「こう言う短い時間で仕上げるものなんだ・・・」と思うしかなかった。
ドラムテイクが終わりベースのダビング録音の番が来た。
マー君は録音経験があるようだった。
タッカンの厳しい指摘や要求に応えるべくマー君は闘っているようだった。
1曲1曲ベースが仕上がる度に新たな命が宿ったように生き生きとしたサウンドに生まれ変わった。
リハーサルをしっかりやって来たお陰もあって、ベース録音はスムーズに進んだ。
ベースの録音が数曲終わった時、僕はスタジオの外に出て、まだ書き上げていない歌詞を書いた。
スタジオの外は森林だった、僕は森の中で歌詞を書くことにした。
小川のせせらぎ、そよ風の音、鳥の鳴き声、森の中では色んなインスピレーションを受けることが出来た。
“TO BE DEMON” “I’M ON FIRE””OPEN YOUR EYES”などを書き上げることが出来た。
スタジオに戻るとタッカンがギターのダビングをやっていた。
スタジオの大きなスピーカーからは録音されたばかりのドラムとベースが爆音で流れていて、タッカンはそのグルーブを体で感じながら様々なテイクを試していた。
タッカンの全てのテイクが僕には完璧に思えた。
ギターダビングではギターのバランスが大きくモニタリングされているので、ギターの細かな音の変化、ビブラート、ピッキングノイズまで手に取るように聴くことができた。
すべてが美しく力強い響きを放っていた。
ギターのリズムトラックもほぼ終わり、「じゃー二井原君、よろしく!」とサウンドディレクターが言った。
レコーディングにはサウンドディレクターと呼ばれる監督のような人がいて、彼がレコーディングスケジュールの進行を仕切り、各パートの録音の最終判断も下した。
彼がOKと言えばOKとなったのだ。
録音ではミュージシャンが録音の判断をするとエンドレスになる恐れがあるので、必ずディレクターのような人がいた方がスムーズに行く。
僕が歌いだしたのは夜だった。
喉の調子は良かった。
ヘッドホーンを付けマイクの前に立った。
歌いなれている「LOUDNESS」を歌うことにした。
皆と一緒に演奏する時は大丈夫だったけれど、いざ自分ひとりだけで歌うと違和感があった。
ヘッドホーンの中の演奏は爆音でロックしまくっていた。
僕は目を閉じてリハーサルスタジオを思い出した。
そして思いっきり声を張り上げ叫んだ。
「歌う」と言うより「叫び」に近かった。
がむしゃらにシャウトして、すべて歌い終えた・・・。
「イイネェ~二井原君、迫力があって良い感じだったよ~♪そう、その感じでもう一回!」
ディレクターの指示通りもう一度歌った。
「おぉ~もっと良くなってきたよ~~~、そうそう、そんな感じで、はいもう一回!」
僕は夢中で歌った。
「又、良いのが録れたよ~~♪ではもう一回・・!がんばって~~!」
僕は再び頭から最後まで全力で歌った。
「今のも良かったけど、さっきの方が良かったね!ハイもう一回!」
少し息が切れた、めまいがした、そして渾身の力を振り絞って再びシャウトした。
「まだまだ良くなっているよ~~~♪は~い、その調子でもう一回!」
喉がすこし焼けたような感じになったけれど、言われるがまま再び歌った
「もっともっとロックできるでしょ!ハイ、もう一回!」
こして僕は続けざまに頭から最後までノンストップで20回以上は歌った。
のどは悲鳴をあげた。
実際、僕の歌の何が良くて、何が悪いのかも分からなかった。
とにかくがむしゃらに沢山歌ったのだ。
そして、僕の喉の限界が来た時点で録音は終了した。
「じゃ~二井原君少し外で休んで待っていて・・・」
僕はいったい何がどうなっているのか分からなかった。
1時間ほど外で待っていると「二井原君、中においで・・・」
ディレクターに呼ばれた。
スタジオの中に入ると、僕の声で僕のパフォーマンスなのだけど、まったく聞いたことの無い「僕の歌」が出来上がっていた!
「え~~こんな風に歌ったのがあったのですか?何番目の歌ですか?」
僕は驚いて尋ねると、デイィレクターは紙を見ながら「頭のシャウトはリズム録音で歌った時のままで、1行目~3行目が3番目で、4行目が7番目で、5行目~9行目が10番目で・・・・」と説明してくれた。
「二井原君、君さ初めてのレコーディングだよね、だからあまり細かく音程やら、歌い方の指示をすると大変だと思ったので、とにかく何も考えないで沢山歌ってもらって、その中から良いテイクを選んで編集する方法を取ったんだよ」
稚拙なシンガーには一番効果的な方法であった。
「二井原君、君は素晴らしい個性的な声、そして誰にも出せないような高音を持っている、そして歌の勢いもある。デビューアルバムだから君の持ち味、魅力をとにかくアピールすることが大事だと思うんだ。細かいことは気にしなくて良いよ。上手に歌うことは考えなくて良い、君らしく歌うことが重要なんだよ!」
他の曲も同じように喉の限界まで何度も歌うことになった。
僕はディレクターに感心したと同時に、一発で完璧な歌を歌えない自分を呪った・・・。
こうして、3日間ほどで全曲のヴォーカル作業は終了した。
今からか考えると、あり得ないようなスピード録音であった。
vocalism.niihara@gmail.com
基本的に僕の方から個人への返事は期待しないで下さい。
よっぽど必要と思われる方へは当然しますけれど・・・。
これはと思うご意見、ご質問は、質問者は匿名の上、このブログ上でお答えさせてもらいます。
::::::::::::::::::::::::::
LOUDNESSデビューアルバムのリズムトラックのレコーディングは数日で終了した。
プロのドラマー、いや樋口宗孝と言うドラマーの凄まじさを封じ込めた、入魂のレコーディングであった。
今まで、リハーサルスタジオやライブハウス、コンサートホールと言う環境での演奏しか経験の無かった者にとって、このレコーディングスタジオは自分の姿を丸裸にされるような厳しい環境であると思った。
全ての音がクリアーにはっきりと聞くことが出来る、即ち、誤魔化しが効かないシビアな環境なのである。
レコーディングスタジオで、人の演奏を聴いている分にはむしろ楽しんで「おぉこんな凄い演奏が!!」と思いながら聴くことができるのだけれど、自分のパフォーマンスには穴があったら入りたいような心境に至った。
レコーディングスタジオ、例えば、手鏡に自分の顔を映しながら他人に「数本鼻毛が出ていて、目やにが付いていて、吹き出物が数個ここにあって・・・」とこと細かく知りたくない情報を指摘されるような、そんな仕事をする場であると同時に、「こんなに目が輝いていて、素敵な笑窪があって、笑うと口元が素敵だよ」と教えてくれるところでもあった。
レコーディングは急き立てられるような感じで進んだ。
実際、与えられた時間は少なかった。
それは、後で分かったことなのだけど、レコーディングが初めての自分にとっては「こう言う短い時間で仕上げるものなんだ・・・」と思うしかなかった。
ドラムテイクが終わりベースのダビング録音の番が来た。
マー君は録音経験があるようだった。
タッカンの厳しい指摘や要求に応えるべくマー君は闘っているようだった。
1曲1曲ベースが仕上がる度に新たな命が宿ったように生き生きとしたサウンドに生まれ変わった。
リハーサルをしっかりやって来たお陰もあって、ベース録音はスムーズに進んだ。
ベースの録音が数曲終わった時、僕はスタジオの外に出て、まだ書き上げていない歌詞を書いた。
スタジオの外は森林だった、僕は森の中で歌詞を書くことにした。
小川のせせらぎ、そよ風の音、鳥の鳴き声、森の中では色んなインスピレーションを受けることが出来た。
“TO BE DEMON” “I’M ON FIRE””OPEN YOUR EYES”などを書き上げることが出来た。
スタジオに戻るとタッカンがギターのダビングをやっていた。
スタジオの大きなスピーカーからは録音されたばかりのドラムとベースが爆音で流れていて、タッカンはそのグルーブを体で感じながら様々なテイクを試していた。
タッカンの全てのテイクが僕には完璧に思えた。
ギターダビングではギターのバランスが大きくモニタリングされているので、ギターの細かな音の変化、ビブラート、ピッキングノイズまで手に取るように聴くことができた。
すべてが美しく力強い響きを放っていた。
ギターのリズムトラックもほぼ終わり、「じゃー二井原君、よろしく!」とサウンドディレクターが言った。
レコーディングにはサウンドディレクターと呼ばれる監督のような人がいて、彼がレコーディングスケジュールの進行を仕切り、各パートの録音の最終判断も下した。
彼がOKと言えばOKとなったのだ。
録音ではミュージシャンが録音の判断をするとエンドレスになる恐れがあるので、必ずディレクターのような人がいた方がスムーズに行く。
僕が歌いだしたのは夜だった。
喉の調子は良かった。
ヘッドホーンを付けマイクの前に立った。
歌いなれている「LOUDNESS」を歌うことにした。
皆と一緒に演奏する時は大丈夫だったけれど、いざ自分ひとりだけで歌うと違和感があった。
ヘッドホーンの中の演奏は爆音でロックしまくっていた。
僕は目を閉じてリハーサルスタジオを思い出した。
そして思いっきり声を張り上げ叫んだ。
「歌う」と言うより「叫び」に近かった。
がむしゃらにシャウトして、すべて歌い終えた・・・。
「イイネェ~二井原君、迫力があって良い感じだったよ~♪そう、その感じでもう一回!」
ディレクターの指示通りもう一度歌った。
「おぉ~もっと良くなってきたよ~~~、そうそう、そんな感じで、はいもう一回!」
僕は夢中で歌った。
「又、良いのが録れたよ~~♪ではもう一回・・!がんばって~~!」
僕は再び頭から最後まで全力で歌った。
「今のも良かったけど、さっきの方が良かったね!ハイもう一回!」
少し息が切れた、めまいがした、そして渾身の力を振り絞って再びシャウトした。
「まだまだ良くなっているよ~~~♪は~い、その調子でもう一回!」
喉がすこし焼けたような感じになったけれど、言われるがまま再び歌った
「もっともっとロックできるでしょ!ハイ、もう一回!」
こして僕は続けざまに頭から最後までノンストップで20回以上は歌った。
のどは悲鳴をあげた。
実際、僕の歌の何が良くて、何が悪いのかも分からなかった。
とにかくがむしゃらに沢山歌ったのだ。
そして、僕の喉の限界が来た時点で録音は終了した。
「じゃ~二井原君少し外で休んで待っていて・・・」
僕はいったい何がどうなっているのか分からなかった。
1時間ほど外で待っていると「二井原君、中においで・・・」
ディレクターに呼ばれた。
スタジオの中に入ると、僕の声で僕のパフォーマンスなのだけど、まったく聞いたことの無い「僕の歌」が出来上がっていた!
「え~~こんな風に歌ったのがあったのですか?何番目の歌ですか?」
僕は驚いて尋ねると、デイィレクターは紙を見ながら「頭のシャウトはリズム録音で歌った時のままで、1行目~3行目が3番目で、4行目が7番目で、5行目~9行目が10番目で・・・・」と説明してくれた。
「二井原君、君さ初めてのレコーディングだよね、だからあまり細かく音程やら、歌い方の指示をすると大変だと思ったので、とにかく何も考えないで沢山歌ってもらって、その中から良いテイクを選んで編集する方法を取ったんだよ」
稚拙なシンガーには一番効果的な方法であった。
「二井原君、君は素晴らしい個性的な声、そして誰にも出せないような高音を持っている、そして歌の勢いもある。デビューアルバムだから君の持ち味、魅力をとにかくアピールすることが大事だと思うんだ。細かいことは気にしなくて良いよ。上手に歌うことは考えなくて良い、君らしく歌うことが重要なんだよ!」
他の曲も同じように喉の限界まで何度も歌うことになった。
僕はディレクターに感心したと同時に、一発で完璧な歌を歌えない自分を呪った・・・。
こうして、3日間ほどで全曲のヴォーカル作業は終了した。
今からか考えると、あり得ないようなスピード録音であった。
by loudness_ex
| 2008-07-02 18:16
