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3月から本格的にこの歴史物を書き出したのですが・・本当にありがたいことです!!
頑張りますワン♪
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地下鉄はすぐに見つけることが出来た。
早速、地下鉄の経路図を見ながら「六本木駅」を探した。
(新宿、渋谷、日比谷、六本木、霞ヶ関、虎ノ門、赤坂、麹町・・・)
今までテレビでしか見たことの無かった地名を実際に見て興奮した。
駅名を見ていてどういう訳か、テレビ刑事ドラマの「太陽に吼えろ」で犯人が逃走している場面が頭に浮かんだ・・・
ボスやGパン刑事、ゴリさん、殿下が犯人を追ってその辺を走っているのではないかと思った。
「メンチョウ」に見えた麹町もテレビで「はがきのあて先」などで何度も聞き覚えのある地名だった。
芸能人がいるのではないかとキョロキョロしたら、僕の目の前を「松岡きつこ」が横切った。
その瞬間気絶しそうになった・・・。
(女優が地下鉄におるで・・・・恐るべし!)
東京にいる実感がますます強くなった。
地下鉄は大阪にもあったけれど東京の地下鉄は大阪と比べて上品な感じがした。
六本木駅へは問題なく着いた。
駅から出ると「アマンド」が目に入った。
(たしかアマンドからタクシーに乗れって言ってたなぁ・・)
僕はタクシーに乗り込み「西麻布まで」と言った。
「お客さん・・歩いて10分ほどですよ」
「あぁ・・いや・・お願いします・・・行って下さい」
僕は道に迷うのが嫌だったのでタクシーを利用した。
タクシーの運ちゃんは歩いて10分と言っておきながら車で20分ほどかかった・・・
今から思えば、六本木から西麻布の交差点は六本木通りをまっすぐ渋谷方面へ行けば3分とかからないものを、この運ちゃん、わざわざ防衛庁を経由して青山一丁目から「西麻布の交差点」と言うありえない遠回りをしたのだった・・・。
西麻布の交差点から再びひぐっつあんに電話して家の行き方を教えてもらった。
(なんや・・・京都くんだりから来たのに・・・迎えに来てくれたらええのに・・・)
僕はすこし不満を覚えながら言われた道を行った。
六本木の猥雑で喧騒とした風景とはうって変わって、ひぐっつあんの住んでいるマンションは閑静な住宅街にあった。
そして、ひぐっつあんのマンションはすぐに分かった。
何故なら、マンションの前には10人程のファンの子と思われる女の子がたむろしていたからだ。
彼女らの手にはひぐっつあんのブロマイド、「LAZY命」みたいなロゴをつけたものを持ち、ちょっと異様な雰囲気だった。
僕は産まれて始めてアイドルの追っかけファンを目の当たりにしたのだ。
(うわっ!なんじゃこの女の子らは!こりゃひぐっつあんもうかうか外にも出れんなぁ・・・ましてや寝起きの顔で僕を迎えに来たくても来れないわな・・・毎日こんな風に見張られているのか信じられへんなぁ・・それにしても、ひぐっつあんって人気あるんやんやなぁ・・・)
改めてLAZYの人気を思い知ったのだ。
彼女達の物凄い痛いほどの視線を感じながらひぐっつあんのマンションへと入っていった。
ひぐっつあんは寝起の顔で僕を出迎えてくれた。
「おぉ!!よう来たなぁ!!!」
ひぐっつあんは二日酔いのようだった。
この日から僕はひぐっつあんの居候となった・・・・。
そして、その日の夜早速、ひぐっつあんは僕をつれて夜の町へと繰り出した。
僕にとって東京初めての夜は「下北沢」だった。
下北沢、そこは京都の学生が通う呑み屋街とあい通じるものがあって、僕にはとても居心地の良い場所に思えた。
(こんな町があるなら安心や・・・)
その夜以来現在に至るまで「下北沢」は僕の東京での憩いの場所となり僕の第二のふるさとになった。
下北沢ではひぐっつあんの馴染みのお店「ジャックポット」で呑んだ。
店内は若い役者さん達やミュージシャン達、学生で溢れ物凄い活気だった。
中にはテレビで見たことのある役者さんもいた。
ジャックポットの店長がチャキチャキの江戸っ子弁で僕を歓迎してくれた。
「おお君が二井原君か!樋口君から噂を聞いているよ!」
そして、ひぐっつあんは何人かのミュージシャンに僕を紹介してくれた。
既にみんなは僕の噂をひぐっつあんから聞いていたようだった。
「二井原君、凄い声をしているんだって?デイビーが言っていたよ!本当楽しみだね!」
この頃、ひぐっつあんはミュージシャン仲間からは「デイビー」と呼ばれていて、僕は何のことか分からなかった。
「なんでみんなひぐっつあんのことデイビーって呼んでんの?」
僕はひぐっつあんに聞いてみた。
「ここでは俺はデイビーやねん・・・」と言って豪快に笑っていた。
「ほんなら俺もデイビーって呼んだほうがええんかな?」
「あほ!殺すぞ!」と言って笑ってビールを一気に呑み干した。
僕は無事に東京に着いた安堵感で満たされた・・・
東京・・・始めて来た場所ではないような奇妙な気分になった。