出番が最後なので、多分9時半過ぎ頃かと思います。
よろしく。
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エリックとの特訓は劇的に僕の英語を進歩させた。
発音が出来ないものは聞き取れないと言うけれど、まさにその通りで、ヒヤリング力も格段に向上した。
最終的には5週間ほどの特訓になったけれど、英語の発音に関しては脳内に革命を起こしたようだ。
それまで、テレビやラジオで全く聞き取れなかった話(音)が、かなりクリアにはっきりと聞き取れるようになった。
単語は面白いように聞き取れるのだが、残念ながら単語の意味が分からないので、結局は何を言っているのか分からなかったのだが・・・(悔)
特訓は辛い、退屈な時間だったけれど、英語が聞き取れるのが嬉しかった。
言葉が分からない、聞き取れないことが、精神的に物凄いストレスを与えるのだ。
少なくとも、僕には相当なプレッシャーとストレスだった。
急に自由な気分が襲って来た~~!!
一人でアメリカにいて、それまで感じていた酷い閉塞感から解き放たれた!
アメリカ人が急に身近に感じられるようになった!
潜在的に感じていた、アメリカに対する恐怖感、コンプレックスが洗い流されるような気がした。
一人でどこへでも行ける自信が出てきた。
人に接する億劫な気持ちも無くなった。
どこか、ハリウッドの知らないライブハウスへ行って、ビールでも呑みたい気分になった。
それまでの悲壮感から、自然に笑顔が戻った・・・。
それにしても、あの時に、もっと本気で語彙力や、或いはもっと突っ込んで、文法をまじめに取り組んでいればと後悔している。
まぁ~今からでも遅くは無いのだけれど。
勉強嫌いだから仕方無いな・・・。
本当に必要に迫られないと、勉強はしないね(笑)
とりあえず、単語を1個づつならかなり発音できるようにはなったけれど、二つ以上単語が続くと上手く出来なかった。
と言うのも、例えば、単語が二つ以上繋がっている場合、ある単語の語尾と次の単語の頭がくっついたり、三人称の“S“の音が濁ったり濁らなかったり、省略したりしなかったり・・・・etc…etc…するからだ。
そして、リズムもとても大事だったりする。
発音では、何より「発声」が大事だ。
日本語と英語では明らかに「発声」が違うことを痛感した。
日本語の喉で英語を発音すると、発音がうまくできない(成立しない)場合があるのだ。
僕はヴォーカリストなので、その喉や発声の違いをはっきり実感できた。
具体的に言えば、日本語は口の中で音を作ることが多いのに対して、英語はもっと喉を開き、喉の奥や胸声を響かせるようだ。
これは最早ヴォーカルの歌う時の発声に近い。
ヴォーカルのテクニック的に言えば、チェストヴォイスが多用されているし、ミドルヴォイスも良く駆使している。
日常会話していて、冗談を言い合って興奮してくると、彼等の多くが見事なミドルやヘッドヴォイスを出して、倍音出まくりのシャウトなのだ!
だからと言って、歌が巧いわけでは無いみたい・・・・(笑
ヴォーカリストにおいて、日本人とアメリカ人の声のパワー感の違いを指摘する人がいるけれど、元来、日常会話の発声からしてアメリカ人は歌っている時と変わらない発声をしているのだ。
小さな頃から、そう言う訓練を学校でしてきている。
パワー感が違って当然なのだ。
で、何故、僕は日本人なのにあんなシャウトが身に付いたのか?
僕は剣道だと思う。
小学校2年(変声期前)から中学校3年(変声期後)まで剣道をやっていた。
剣道の気合を入れる声「うりゃ~~!!」「おりゃ~~~!!」や、「め~~ん!」「こて~~」「どう~~~!」の叫び声はミックスやヘッドヴォイスである。
要するに、シャウト声なのだ!
僕はそれを、8年以上真剣にやってきたからだね。
剣道経験者は、意外とロック声出るかもよ!
上手く歌えるかどうかは別問題だけど。。。
さて、発音の話に戻るけれど、とにかく、日本人が苦手とした音はとりあえず、それなりに英語っぽく出来るようにはなったけれど、これはあくまで、ゆっくりと、会話する程度のスピードと発声での話し。
だから、(お!これはレコーディングも案外上手く行けるかも!)と楽観したのも束の間、レコーディングでは恐ろしい地獄を見ることになるのだが・・・・。
そこそこ上手に出来ていた発音も、ロックを歌った途端・・・すべて崩壊したのだ・・・(号泣)
このくだりは後に譲る・・・。
1984年8月21日
メンバーとスタッフが来た・・・。
久しぶりのメンバーと再会だった。
「おぉ!お疲れさん、ニーちゃん。どないやった?一人で?」
ひぐっつあんがねぎらってくれた。
早速始まるレコーディングにローディーの人がギターのメンテナンスに余念が無い。
タッカンもマー君もひぐっつあんも、これから始まるレコーディングに物凄い気合が入った表情だった。
悲壮感すら漂っている感じだった。
「マックスノーマンってどんな奴や?」
誰かが言った。
「プロデューサーは厳しいらしいな・・・」
誰かが忠告してくれたこの言葉が重くのしかかる。
社長「明日朝、マックスとミーティングやるから」
いよいよ、マックスとの戦いが始まる。
LOUDNESSの新たなステージへの幕が開いた・・・。